建築から学ぶこと

2009/09/02

No. 195

手足を広げることが力になる

仙台で開催の日本建築学会大会に出かけたついでに、隣県にある個性的なバーに寄った。日本中から選りすぐったフルーツを使ったカクテルのメニューが豊富である。結構、東京の大田市場経由のものもあり、沖縄直送もある。素材にこだわる丹精さがこの店の評判を高めてきたのだ。いい果物は、地方では手に入らないんですよ、と言うマスター。彼は地産地消というありようの限界を語っているのである。おそらく、地域が活力を維持するための最良の武器とは、果敢にアウトリーチする自発性だと思われる。

さて、大会では、2009年の日本建築学会教育賞を受賞した5件のうち、「デザイン教育の先駆的試み – 国際建築ワークショップ -」と「栃尾表町住民と新潟大学工学部建設学科学生との協働によるまちづくり」の受賞者記念講演を聴いた。前者は宮城、後者は新潟から発信する、知恵と人の交流を促そうする試みである。地方都市からの提言であるが、地域をモデルチェンジするために、あるいは地域文化を継承するために、地域に閉じない発想から切り出しているのはすばらしい。教育的見地から言えば、手と頭とを兼備する自立的な人材が育つ基盤となるものであろう。

大会での私は、インターンシップをめぐる問題を扱う研究協議会で、実務サイドからの報告を行ない、議論に加わった。法律の定めに対抗した統一システムをつくるかで悩むよりも、すぐれたプロフェッショナルを育てるために、産学が協力して具体的な追求を個別に始めることが重要ではないか。それは私が論じようとしたことのひとつだった。いま、すべてが国際的な連動の中で動き、地域も大学もそう簡単に将来を描けない。これを切り拓くには、散在する知恵をどううまく繋ぎながら力に変えるかが鍵となるであろう。そこに、学生が能動的に関与してゆくことは必須である。

佐野吉彦

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