建築から学ぶこと

2018/11/14

No. 647

アジアの南で考える、普遍性と固有性

シンガポールでAIA(アメリカ建築家協会)International Regionの会議に参加した。主としてアジアで活動する建築家たちが短く講演し、それに基づいて議論する場だった。主催者団体の関係上、英語を軸とする国の出身者にスポットライトが当たりやすいところはあるが、広汎な国からの参加を得ていた。ここで明らかにされたのは、サステナビリティ・都市のエコシステム・社会のレジリエンス・望ましい公共空間といった普遍性のある課題で、アジアで語りあうことで、地域事情に立脚した解き方を探ることになり、なかなか興味深いものがあった。
会議では、シンガポールや香港の建築家が<ユニバーサルな視点からの方法論>を提示していた。たとえばシンガポールのRichard Hassel(WOHA)は、自らの作品を解析するのに、ガーデンシティの伝統とメタボリズムを掛けあわせてみせる。たぶん、モダニストの延長線上にあると言えるだろう。あるいはマレーシアのKen Yeangの長年にわたる追究のさらなる洗練と言えるかもしれない。それらに向きあうかたちのインドネシアのIsandra Matinは、バナキュラーなデザインをいかに持続性のある建築言語に生成してゆくかのプロセスを語っていた。これはモダニズムとは異なる角度である。
私はシンガポールで2泊滞在したのち、ベトナムの首都ハノイに向かった。この都市には固有のアイデンティティが確かにあり、一方で若いエネルギーがあふれている。現代に適した社会基盤と、社会活動に必要な要素が、「順不同ながら」かたちを整えてきている場所だ。これからのハノイでは、さきほどの議論にあった普遍性と固有性をめぐる取り組みが、具体的に進んでゆくだろう。この国の動きを手掛かりにして、これからのアジアに適したデザインと工法、業務プロセスとは何かを掘り下げるのは興味深そうだ。

佐野吉彦

ベトナム建築家協会本部にて

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