建築から学ぶこと

2024/07/31

No. 928

世界が見つめる場からのメッセージ

パリ・オリンピックが7月26日に開幕した。開会式ではUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のトップであるフィリッポ・グランディ氏の功績がスクリーンで紹介された。UNHCRは、かつて緒方貞子さんが同じ地位にあったことから、ルワンダでの虐殺問題の処理などの活動を通じて日本でも比較的知られている。また、グランディ氏の前任は現在国連の事務総長であるアントニオ・グテーレス氏であり、現在のグランディ氏はウクライナやガザ地区の深刻な状況を扱っており、UNHCRの役割は国連の活動の中でも大きく注目されている。
2016年のリオデジャネイロ大会以来、オリンピックには難民選手団が組織され、参加が実現している。UNHCRはIOCと連携してこの取組みを進めてきたのである。今回のパリには37名のメンバーが顔を揃えた。これは、難民問題が一層深刻であることも示している。華やぐ開催期間の中で、世界は昨年末で1億20000万人と言われる難民の存在を認識することになるだろう。しかし、誰にとっても、とりわけ困難な状況にある人々にとってはアスリートたちの活躍は希望であり、そして若い難民たちにとっては成長のロールモデルとなる。難民選手団組成は重く、しかし明瞭な使命を纏うが、37名の成功を祈りたい。
さて、世界は環境に関わる問題も深刻である。それが争いを引き起こし、難民発生につながる可能性もある。今回のオリンピックでは、カーボン・フットプリントをこれまでの大会から半減させること、運営では100%再生エネルギー使用などを謳い、会場の新設も抑えてきた。世界が注目するイベントでは、このような世界に向けて明瞭なメッセージを発信する必要がある。来年の大阪での万博は開催趣旨が異なるとは言え、世界が前向きに変わるきっかけを創り出すことができるだろうか。

佐野吉彦

提言するパリ、永遠のセーヌ(昨年秋)

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