2009/04/08
No. 176
3回目の<東京マラソン>は、向い風やらビル風にあおられつつの走路だった。初回から連続参戦という幸運な私は、その都度異なる気候を味わえたことになる。いつもながら、東京の自然の表情とは、なかなか彫りの深いもの、と感じる。
このマラソンは、当日ではなく前日までの3日間に受付を済ませることになっている。そのために、受付会場でありゴール地点である東京ビッグサイトへは2度行かねばならないのだが、受付日の会場では充実したフェアが設営されていて、これが楽しい。スポーツ関連の企業が商品を並べる広いブース群を巡ると、思わず昂奮してゆく。それは、このフェアが明らかに私を含む出場者を狙い撃ちしているからで、売る側と商品を見つめる眼のあいだにリアルな空気がある。会場に入ったときから、われわれは客観的な観察者でないことを意識させられ、結果として財布の紐が次第に緩んでゆくのだ。
マーケットを活性化させるために重要なのは、念入りなプロモーションを行ないながら、このようにマーケットへの積極的関与者を増やすことであろう。ただし、関与者に自発性と真剣味があることが重要で、その醸成に手抜かりのなかった東京マラソンというマーケットはさらに成長するはずだ(私も巧みに組み込まれたというわけである)。
さて、月が変わった4月に開催された<アートフェア東京>や<101TOKYO>はアートの動向を知ることもできるものだが、基本的にはそれぞれのアートのマーケット価値を見定め、リアルな取引を促す場であった。価値とは、アーティストの客観的評判や画廊のアクション、コレクターの見識などを通して複合的に形成され、納得性のある相場が出来あがるもの。実はこの会場の中にいる人は多かれ少なかれその価値決定に関わる者となっているはずである。例年より落ちついた空気の<アートフェア東京>であったが、このフェアが安定した評価をかちえることはアートの価値や、東京の国際的な価値を高めることにつながるだろう。価値形成に積極的に関与することは、それぞれが利益や楽しみを得るためだけでなく、都市のアピールとしても大いに意義がある。