2006/09/20
No. 50
急成長した「ミクシィ」が東証マザーズに上場した。同社の顔となる事業は「mixi」という名のSNS(ソーシャルネットワーキングサ−ビス)。これは、笠原健治社長の定義によると「ネット上だが、現実社会の人間性などを投影してコミュニケーションできるサービス」というもの。ネット上での、同じ関心を持つコミュニティは従前より存在していたが、mixiでは立場を明らかにして意見を述べる。不正確な発言は参加者によって修正され、漂う情報は結晶してゆくことになる。
こうした「可視的でないコミュニティ」は今後大きな勢力になってゆくだろうが、扱うテーマによっては適切な効果を産む。各地に散らばった同窓どうしのコミュニティの活性化、同じ病気に悩むどうしの連携などには向いていると言える。離れた距離ゆえの新鮮な化学反応も起こってゆくだろう。基本的に、今後mixiが生み出す可能性はポジティブに見守りたい。
一方で、「近隣というコミュニティ」もやはり大事に育てておくべきである。その風土や産業環境のなかにこそうまれる独自の知恵はあるものだ。個性的であった文化や伝統は、時代が変われば衰退するかもしれないけれども、知恵を生み出す力が残存していれば、付加価値のあるあらたな成果を生み出してゆくものだ。
製造業における「ものづくりの底力」の場合は、まさにそのことが言えるだろう。ネットが受発注や商品流通に機敏な役割を果たしても、製造業においては、顔つきあわせてともに取り組むプロセスが重要であることは変わらない。商品の売れ筋は変わっても、知恵を生み出す力はやはりそこに根ざしている。こちらのしぶとさについても、まだポジティブに見守っても良いのだと思う。