2022/07/06
No. 826
ソウルの中心部にあるソウル広場は、ソウル特別市庁とプラザホテルに囲まれた広いスペースである。芝生でのんびりとしたイベントが開催されている日もあり、政治集会が人を集めている日もある。オープンであったり、クローズなかたちで使われたり。2階部分にあるホテルのラウンジからはさまざまな光景が楽しめる。ソウルの歴史は古いが、今の姿は2004年に整ったので歴史はまだ浅く、天安門広場のように重たい歴史を感じさせるものではない。ソウル広場はシンプルに計画されていて融通は効いていそうであり、今のところ戦略的には成功している。
この国だけでなく、アジア諸国の人の集まり方は一般的に包摂性が高い。東南アジアの水辺とかピロティとか、共同住宅や駅舎が道路に接するあたりとか、使いこなしかたの多様性はたくましさを感じさせるものであり、どの国に出かけても見飽きない。管理されていないところに妙味がある。こうした、エネルギーの発現する場所、何かを結びつける場所をうまく計画できるかどうかは、アジアの都市計画の大事なポイントではなかろうか。相反する要素をいかに共存させるかは重要で、単なる管理型に持ち込んでしまえばそこで話は終わってしまうだろう。
高村学人氏(法社会学)は、「コモンズというのは、実際には、公と共と私のハイブリッドとして成り立っているので、大事なのは、これらをどうしたらよりよくブレンドできるか、を考えることにある」と言う(*)。その達成にはさまざまな知見の集積が必要であろう。いかに人がうまく集まれるかは民主主義の実験であるわけで、試行錯誤を繰り返してみなければ的確な解は得られないように思われる。もしかしたら人類の歴史はまだ始まったばかりなのかもしれない。
*「アジアン・コモンズ」(篠原聡子、平凡社2021)に所収