建築から学ぶこと

2023/09/20

No. 885

「正しいやりかた」の重要さ

教育者であり、柔道家であり、IOC委員として世界につながる顔を持っていた嘉納治五郎(1860-1938)は、もともと灘の酒造家の出である。その縁から、灘中学校・高等学校(神戸市)の設立にかかわった。現在、その校長室には嘉納の書が掲げられているが、その意味するところは、「よい志を持ち、正しいやり方で、成功に向けて努力する、それが人が生きてゆくうえで一番大切だ」というものである(和田孫博著「精力善用・自他共栄」による)。この言葉で着目したいのは「正しいやり方で」というくだりである。たしかに、勉学でも政治でもビジネスでも、目標に向けて適正な手順を踏んでいるかどうかは、のちのちに大きな影響を及ぼすことは実感する。もちろんそれを嘉納が先だって体得しているわけだが。
それとつながる言葉が聖書にある。要約すれば「友人が罪を犯したら、まずあなたが一人で行って忠告し、聞き入れなければ1人か2人伴って行け。それでもだめなら教会に申し出よ。」というもので、段階を追って神が介入してゆくらしい。それはまた、その友人のプライドも傷つけないうまい手順でもある。これは教えを説きながら、社会における「正しいやり方」の指導をしている次第である。別の箇所で語られる、「あなたが人から助けを得たなら、他人にもそのようにせよ」も正しい処世訓である。こうした言葉につながる西欧文化に嘉納治五郎は触れていたのかもしれない。
さて、嘉納の言葉には「良い教師の採用は校長の役割」というものもあるらしい(和田・前著)。相手の中にある才能や、経験から生まれる見識は、見抜くことはできるかもしないが、「正しいやり方」の意義をよく知り、伝えることのできる人材を探し出すことはさらに重要である。良い建築を作る組織もプロセスもきっと同様であろう。

佐野吉彦

正しいやり方は、適切な成果を生む:甲子園

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