建築から学ぶこと

2023/07/05

No. 875

コミュニティの「午後」

5月から6月はいろいろなコミュニティの総会・節目行事の季節であった。どこも新型コロナウイルスの困難に直面してきたので、対面の場を本格再開すると、今後の活動継続に向けての議論が一斉に動き出していた。そこでは参加員減少の課題があったり、世代間・地域間の認識差があったり、活動自体が既存の法制度という天井に阻まれていたりする。現状の課題はコミュニティによって多様だが、面白いのはこの4年ほどでデジタル化の進展が変化の背中を押す状況に変わってきているところである。これまでの年長者による安定志向が通じるコミュニティでないのだが、若い世代や遠方からの参画のハードルが下がる可能性もあり、なかなか興味深い。
こういう場で、私はしばしば当事者になって進行を司ることがある。それは私にとっていろいろな見方を知るだけでなく、自らの思考基盤を問い直す機会になる。たとえば設計事務所の経営者との間の議論では、ビジネスの目標やデザインプロセスのありかたなどが共有できているので、自分も一緒に守りに入った議論をしている時がある。一方で医者や薬学の研究者、教育者、アーティストなどの専門家と話をすると、それぞれの育成プロセスにある独自性と課題を知って目が開く。外国人との会話からも同じような発見の驚きがあるが、そこからいかに普遍性のある知恵を見出せるかが重要である。どのように地方が人材や情報を豊かにできるか、女性管理職が社会を率いるためには何がテーマになるとか。「業界」がクロスすることは重要な意義がある。
さらに、デジタル活用はこれからのコミュニティ運営の主軸だし、AIが使える部分もあるだろう。そこを先取りして議論することによって、専門家と、属するコミュニティが生き延びることができる。我々がいる現在とは興味深くもあり、危うくもある局面だと言える。

佐野吉彦

そこは次の節目への里程標ー大阪にて

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