建築から学ぶこと

2014/03/26

No. 418

そして、「建築家」から学ぶこと

去る3月19日、安井建築設計事務所にとって90回目の年の経営戦略とアクションについて、プレス向けレビューをおこなった。創業記念日である4月1日から始まる2014年度を<YASUI STYLE 1924-2014>というキーワードのもとに様々な試みに取り組むものだ。主要な経営戦略のなかで念を入れて語ったのは<IPD/BIMを通じた社会システムの変革、マネジメントビジネスの推進>というくだりである。われわれはかねてから自らの組織の建築生産プロセス改革だけでなく、BIM技術を活用して社会基盤を変革することを目指している。そこに注力する年度だ。人と人とを結びつける情報の基盤がうまく形成されれば、さまざまなステークホルダーのネットワーキングが図られる。その実現のために尚一層力をこめたい、と述べた。

当然ながら、建築と建築技術、そして建築家が社会において着実な役割を果たすことができれば、人間社会に豊かな実りをもたらされる。そのためにも、建築にある価値とは何かを専門家と社会が連携して掘り下げることは重要だ。建築の設計プロセスとはその発見の道のりでもあるのだが、丹精こめてつくった建築という成果を、社会が一緒になって確認しあい育てあげる機会も重要だ。このレビューでは、そうしたことの検証の場を数多く用意する計画も披露した。

そうしたメッセージを見届けたように、翌朝、安井建築設計事務所・相談役の佐野正一が93歳で亡くなった。私の父であり、建築の社会的責任について考え抜いた人。技術者としての誠実さと誇りがあり、自らを律し、人を厳しく育てた人だ。大阪ガスビル新館(1966)、大阪空港ターミナルビル(1969)、サントリーホール(1986)、東京国立博物館平成館(1999)といった作品こそ、社会システムを具体的に提言するものだったと言える。私はこれら残された仕事に問いかけながら、この先、建築にどのような可能性が潜んでいるのかについて考え続けてゆこうと思う。

 

IPD: Integrated Project Delivery

BIM: Building Information Modeling

佐野吉彦

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