建築から学ぶこと

2019/04/17

No. 668

賢く生き延びるために:2019年春

オリンピック・パラリンピックが間近の日本には、好調なインバウンド需要がある。一方でITを活かした新産業創出や企業変革は全般に勢いが弱く、日本企業が世界での競争力を失ってきたデータもある。現状に満足している場合ではない。それをきちんと認識したうえで、目の前の社会課題、たとえば高齢化、多文化共生、地方の空洞化といった課題をうまく解決する方法を探り当てれば、まだまだ日本のチャンスは開けていると思う。
ところで、今春の東京大学の入学式での上野千鶴子さん(名誉教授、社会学者)の祝辞が少しばかり話題を呼んでいた。上野さんはジェンダーをめぐる現実を語り、どうそれを乗り越えるかを述べ、「あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください」とメッセージを送っていた。
ここだけ切り出すと話の文脈がわからないが、少なくとも知識の正しい使い方について本質を明らかにしている。さらに、壇上からの去り際には「あなた方を待ち受けているのは、これまでのセオリーが当てはまらない、予測不可能な未知の世界です。これまであなた方は正解のある知を求めてきました。これからあなた方を待っているのは、正解のない問いに満ちた世界です」と締めくくっていた。
さて、今や人生は100年時代である。日本の未来のためには、いろいろな立場や世代が創造的役割を演じる必要があると思う。上記の祝辞を、若者でなく、ベテラン世代に対して送られたエールであったと捉えてみてはどうか。建築で言えば、計画論も生産方式も20年から30年ごとに解き方は大きく変わった。その変遷を知るベテランが新たな解を見出す努力をすれば、世の中はしぶとく、賢く変われるように思うのだが。

佐野吉彦

落合陽一さんの講演にて。会場のベテラン世代は、話のスピードにはなかなかついてゆけないが、ずしりときた、と話していた。

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