建築から学ぶこと

2013/07/31

No. 386

キーパーソンになりうる人

成功する組織には中央にすぐれたリーダーと補佐役が座っているが、それと別に、事態を安定させるか展開させるかのキーパーソンが必要である。長続きする関係づくりにもそれはあてはまるであろう。外交の危機的局面を切り抜けるためなどに、有能なキーパーソンが機能した例はいろいろとある。先日、友人が紹介してくれたワシントンポスト紙の記事を読みながらそのことを考えていた。

その記事[The Case for Caroline Kennedy as ambassador to Japan](web版)は、新しい日本大使発令をめぐるコラムである。筆者Max Fisher氏の語りは、1961年のケネディ政権発足時から始まっている。戦後から60年安保へと続く時代の日米関係は、国家間の政治同盟の色あいが濃く、当時の世界情勢の中では盤石な二国間関係ではなかったのだという。そこでケネディは知日派のライシャワーを大使に任じ、弟ロバート・ケネディを特使として派遣する。人と人との広汎な関係を育てようとしたのだ。結果としてライシャワーの知性が日本の不安を取り除き、ロバートは早稲田大学での講演で学生との対話をおこなうなどアクティブな働きをした。カリスマ的な響きを持つケネディという名前は、じつは日米両国の距離を縮めた功績とつながる名前なのだ、と記事は言う。

今回の、JFKの娘キャロライン・ケネディの駐日大使任命にはいろいろな見方があるが、以上の文脈から考えると、日米関係発展への前向きのメッセージと取れなくもない。記者はそれに同意しながら別の考察を加える。この任命は、男女共同参画社会のなかで相変わらず男性優位の日本に対しての象徴的役割を果たすかもしれない、というものである。日米両国のリーダーはそれぞれの政治構想に基づいた推進をするだろうが、この両国間にある実際を好ましい展開に導くのは、こうしたキーパーソンなのではないか。新大使のクリエイティブな取り組みに大いに期待したい。

佐野吉彦

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