建築から学ぶこと

2021/08/18

No. 782

世界へ開く眼

前回言及したような国際大会の日本国内開催は、アフターコンベンションにこそ効果が表れるに違いない。一つには、そこに関わった者が次のテーマやモチベーションを見出すチャンスとなること。もう一つは、その大会成功のために構築したチームワークが次のチャレンジに活かせることである。なので開催の苦労は買って出た方がよい。そうして得られた知的所産あるいは残余の資金は、次の世代の活動支援に大いに役立てることができるのだ。「第16回DOCOMOMO国際会議2020+1東京」は、価値ある建築の活用、あるいはそれを活かしたまちづくりや教育・学習といった知恵を必ずもたらすはずである。

世界の凄みと出会うこと。オリンピックもパラリンピックも同じように扉を開く成果を期待するが、無観客だと、ほとんどの人はテレビでの日本人が登場するシーンを通じて大会に参加することになる。スケートボードなどの新競技で日本人が活躍できたのはよかったものの、なじみの薄いスポーツでの高いパフォーマンスと出くわす機会があまり放映されないのでは驚きが半減する。渡航が制限されている時期でもあるし、日本で起こるかけがえのない瞬間に誰かが触発されていてほしいのだが。

おりしもIPCCが、人間活動の温暖化への影響は疑う余地がないと発表した。3年前の想定より、世界の気温上昇スピードが高まっているのだという(*)。だが、われわれは酷暑や悪天候を通じて気候変動を実感するが、まだ本当の危機に向き合えていない可能性がある。同様な例で言えば、複数の国で起こっているような人権問題についても、日本は手を差し伸べる・自らを改める感度がまだまだ鈍いようにも思われる。いろいろなテーマについて、世界の最先端を知り究めようとするマインドがなければ、日本は遅れてゆく懸念がある。

 

* IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)による六次評価報告書では、「産業革命前と比べた世界の気温上昇が2021年度から40年に1.5度に達する」という予測をしている。2018年の想定より10年ほど早い。

佐野吉彦

夏の記憶。

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