建築から学ぶこと

2018/12/12

No. 651

新潟が育んだ、たしかな表現

北国はしばらく、厳しい気候と戦う季節である。越後の国ももちろんそうである。温暖化傾向があっても、ドカ雪はしばしば日常の行く手を遮る。それでも新幹線や高速道路のネットワークはこのエリアの移動をスムーズにしてくれる。もともと良港を経由する海運に恵まれていた新潟は、交通交易の工夫をずっと続けてきた土地といえるだろうか。それがきっかけとなって新潟にはいろいろな新しい知恵や実験がうまれてきた。何人も優れた音楽家を輩出しているのもその一例だが、現代美術の活動体<GUN>も特筆すべき成果を残している。
じつはそのような取り組みがあったことを知ったのは、不勉強にしてこの秋にあった堀川紀夫さんの個展(MISASHIN・GALLERY)においてだった。堀川さんは1967年に旗揚げした<GUN>(名の由来はグレートウルトラニイガタとも、眼とも、銃ともいわれる)の主要メンバーとして、パフォーマンス、ランドアート、ポリティカルなメッセージも含むさまざまな角度から表現を追求した。活動の舞台は長岡現代美術館であったり、新潟大学であったり、信濃川の河川敷であったりした。だが、一見地味な拠点から噴出したエネルギーはその時代の世界の動きとリンクしている。そしてひとつひとつの完成度も高いのである。
ちなみに、1954年に始まっていた大阪・中之島や兵庫・芦屋で活動した<GUTAI>すなわち具体芸術協会の取り組みとつなげてみると、なかなか日本は凄いレベルのものを達成してきたと思う。私の手元には、<GUN>が雪の河川敷でおこなった、目にも鮮やかなアクション「雪のイメージを変えるイヴェント」のインクジェットプリントがある。これは記録写真とも言えるし、写真表現とも言える。その多義性は興味深いが、率直に一目惚れする、美しい成果である。

佐野吉彦

「雪のイメージを変えるイヴェント」(部分)

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