2012/08/08
No. 337
ロンドン・オリンピックの開会式は、英国の歴史をショウアップしてみせていた。そこに多様な英国音楽史を重ねあわせていたのは興味深い。この日や、日々の表彰式で流れる「炎のランナー(The Chariots of Fire)」のテーマは、人間ドラマであるオリンピックのイメージにうまくはまっていた。こうした、この国らしい独自の試みは大会の各所に表れているようだが、独自のプロトコルを受け継いできたオリンピック大会の基盤を損なってはいないようだ。オリンピックにある公正の精神に敬意を払っているところは、伝統ある国の見識であろう。
ところで、先日「友愛会」という団体が創立100周年を迎えた。ユニテリアンの平等な思想(キリスト教精神だが、宗教色は抜かれたもの)に基づいてスタートした「友愛会」の社会活動は、現実主義に基づいた労働運動として成長し、のちに同盟、さらに連合へと基盤を整えていった。そのように組織のかたちが時代とともに変化しても、基礎精神を保っているのがこの団体にある見識である。オリンピックも労働運動もうまく生き永らえてきたのはこうした原点を尊重するところにあるだろう。
建築の歩みにおいても、同じ視点は有効である。では、いま生まれつつある新たな潮流のなかでは、どう扱われているだろうか。先日開催の「新世代建築家からの提起(Next Generation: Manifestations of Architects Under 35)」展(渋谷ヒカリエ「8/CUBE」)では、18組の若い建築家による、明瞭で現実的な切り口が紹介されており、同時に機智に富むものであった。各建築家の今後のたくましい戦いを予感させるが、かれら全体が現在立っている地点をうまく定義したキュレーションの仕事が意義深い。それは新世代を後押しするだけではない。長期的に見て、基盤を設定して読み解き・見通す視点は、建築界をうまく世代から世代へ受け渡すために貢献することになるからだ。