建築から学ぶこと

2012/03/21

No. 318

この道はまるで滑走路

3月16日、UIA大会2011東京大会日本組織委員会(JOB)の最終の諮問評議会が開催された。了承されたのは、2005年の大会誘致決定以来、活動を続けてきたJOBという組織が月末にJOBを解散することである。私はずっと大会の運営部会長を務めてきたが、大会後に携わった最後の任務は、「公式報告書」作成を統括することであった。この日、それもついに完成発行にこぎつけた。

じつに、幸せなことである。結果として多様な知恵と情熱で構成され、個性と事態がそれぞれに折りあうところを見出しながら開催にたどりつき、UIA2011東京大会というひとつの個性に結実することができた。それだからこそ、ここまでの道程をきちんと書きとめておくことは重要ではないか。私の「公式報告書」における最大の熱意は、大会への道程について年表とともに書き残すことに向けられた。話は15年前あたりから始まっていて、大会誘致における幾度もの蹉跌、世界をゆさぶってきた専門家資格制度の再編の動きの反響、恐慌や震災に向きあってゆらぐ確信などなど。財政面も参加者数も満足できる結果なのだけれど、決して単純なサクセスストーリーを描こうとは考えなかった。

でも、やはり幸せは幸せである。日本の建築界はひとつの目標に向けて集約して取り組む経験を得たはずだが、その成果ととともに国際的に結んだネットワークは、貴重な宝として日本の建築界の発展に活かすことができるのであろう。そして、震災の年に開かれた国際大会において「災害を乗り越えて」というメッセージを大会宣言に盛り込んだからには、<多発する世界の災害に対して、日本の持つ知恵と経験が国際的に貢献してゆくことについても、一緒になって取り組んでゆく必要もある>と感じる。報告書にはそのような思いやメッセージも重ねたのだ。ともあれ、巨大な共同作業であり、ともに時代の足跡を残した大会であった。手ごたえを感じる2012年3月である。

佐野吉彦

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