2013/02/13
No. 362
サントリーホールに平成24年度のJIA(日本建築家協会)25年賞が与えられることになった。この賞は、ひとつの建築をできあがったあともきちんと維持し、積極的に活用することで社会の大切な資産として丹念に育てあげた功績に着目している。そこに至るまでの建築主・管理者と建築設計者・施工者の良好な関係も認めたということになるだろう。ホールの場合、演奏者も観衆もそれに加えることができる。そうした基盤の上で2007年の全面的改修が実施され、美しい響きも内観も維持されることになった。一方で、25年の時間の流れは、ホール・演奏者・社会の関係をゆっくりと変えている。サントリーホールは、オリジナル公演制作、またカーネギーホールやウィーンフィルと定常的関係のなかからも知恵を紡ぎ、専門家教育プログラムやアウトリーチプログラムを企画展開できる<運動体>へと成長してきた。このホール独自の文化が育ってきたのである。
建築設計は将来の性能を担保するものだが、このような好ましい変貌について正確に予知できたわけではない。振り返ってみれば、建築のサステナビリティには、積極的に生き続けるために何をすべきかを問い続ける<文化の基盤>が必要であることを、理解することができる。だからこそ、建築設計者が竣工後も<文化の基盤>をつくるために積極的に関わることは重要であり、社会的使命であると言えるのだ。
ところで先日、春節(旧正月)前の中国に出かけた。同じ25年の間に中国の拠点都市は都市整備を大きく前進させてきた。まだまだ、それぞれの地に<文化の基盤>が成熟したかどうかの答は出揃っていないだろう。指摘したいのは、その都市開発に関与してきた日本の建築家や専門家が、それぞれの都市が生き続けるために何をすべきかを、一緒になって問い続けているかどうかである。専門家の社会的アクションは国境を越え、それはもちろん中国に限らない。これからさまざまな場所で建築をつくるプロセスに関わることには重要な使命が含まれている。