建築から学ぶこと

2024/08/28

No. 931

暑い夏に考えていたこと

酷暑の夏もさすがに出口が見えてきた。振り返れば、都会のヒートアイランド現象は生命の危険につながるから、政府もメディアも住宅での空調の運転を奨励していた。ヒートアイランドの解決には、長期的な観点から廃熱抑制や緑化対策などを進めてゆかねばならないが、当面は人の健康に注意が払われている。この夏に実施された、高校野球が開催時間をずらしたり試合時間を短縮したりする工夫も、環境対策よりは人の健康や尊厳を確保する目的でのトライアルだったわけである。

一方で、地球温暖化は都市の性能改善だけで抑制できるものではなく、国のリーダーシップあるいは国際的な合意のもとに、エネルギーの選択を含む総合政策として推進すべき課題である。強い台風の襲来は気候の変動を実感させるが、すぐに着手すべきは甚大な被害を防ぐ対策であり、根本的な解決はヒートアイランド対策以上に長期的となる。それは戦争のない世界を築くことと同じく、腰を据えて臨むべきものだろう。この夏には、日本でもいくつか選挙があり、英国では首班が交代したし、米国では大統領選挙が候補を差し替えながらヒートアップしてきた。そうしたリーダーたちが先見性を持ちうるかは秋以降に期待したい。

ところで現実的な話題だが、悪天が予測される場合、鉄道や航空が一斉に計画運休することが慣例になっている。これは安全運行だけでなく、そのための乗務員や車両・機材の確保、関連する商業施設の運営と連関している。だが本当に緊急移動の必要がある場合はこれでよいのか、実際にはもう少し区間と時間を区切った運休計画があって良いとは思う(あるいは、誰も緊急移動の必要がない社会が作れるか?)。日本は多くの経験から災害に対して良い手を打ってきたが、まだまだ不足はある。時代を動かす大きなビジョンと、細やかな視点の両方が必要だろう。

 

佐野吉彦

輝き過ぎる夏

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