建築から学ぶこと

2005/12/21

No. 14

景観を取り扱うために

建築に関わるさまざまな課題が、年をまたいでゆきそうである。専門家の姿勢が問われる1年であったが、すぐれた建築をつくるために重要なのは、細やかな技術に裏打ちされていることと、バランスのとれた判断であることが、振り返ると実感される。

一方で今年は<景観法>が成立した年としても記憶されよう(6月施行)。<美しい国づくり政策大綱>から一歩踏み込んだものとして、包括的な法律がようやく整った。ここでは地方自治体が積極的な役割を果たすことが期待されている。市民の総意のうえに、専門家が加わってその土地にふさわしい建築や都市景観が形成されてゆくとしたら、素晴らしい。今後は景観を論点にした首長選挙も現れてくるかもしれない。

ただ、この耳当たりの良い「景観」という響きは、取り扱い注意である。景観という言葉の範囲は、小さな人文的景観(歴史旧蹟など)から大きな自然景観(遥かなる山河など)まで多義であり、厳密に法文を書いても、論点は拡散しがちである。景観計画をつくるときに、個別に目標を共有化することが必要であろう。それは物語と呼んでも良い。ひとつの通りの景観を整えるときに歴史的な物語を意識させるのか、美しい環境装置として未来に向けての物語を構築するのか。理念が明瞭に伝わることが望ましい。その努力はまちの好感度アップにも貢献するだろう。

それに先立ち、美醜のスタンダードについて一度皆で確認したほうが良い。たとえば、添付の写真はどこにでもある通りの冬の午後。車路側に低い植栽があり、蔵が並ぶ、趣向は悪くない通りである。しかしここには紅葉の前に短く刈り込まれてしまう街路樹、架線と電信柱の林立、無造作に置かれた看板、写っていないが派手な色彩の店舗が紛れ込むなど、緑の季節には露見しない醜悪な現実が見える。問題は、皆が鈍感になっていること。景観に関する共通感覚を官・民で共有する努力も、景観を支える基盤であろう。

佐野吉彦

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