2017/12/27
No. 604
本の扉に記されているように「AI、IOT、ビッグデータは、世界をどうやって変えてゆくのか?そのとき専門家の知識や職業はどう変わってゆくのか?」というテーマを<プロフェッショナルの未来>(* リチャード&ダニエル・サスカインド著:朝日新聞出版2017)は追いかける。著者は、実用的専門知識を専門家が独占する時代はすでに終わりを告げていると考える。医療、教育、弁護士、経営コンサルタントそして建築家などの専門家がこれまで構築してきた手順と情報体系は、その一部を機械が代行するか、機械を使いこなす「準専門家」が担うか、発注者自らがネットワークを活用して入手するようなかたちに移っている。もはや既成の区分に沿ったかたちでの情報は独占できにくくなっており、法律と制度の改正だけでは専門家の仕事は守り切れない。情報利用が民主化に向いてゆくのはひとまず歓迎するとしても、課金が難しいゾーンは広がっている。どうやら未来は少しずつ到来してきているようである。
では、変動期を乗り越えて何が専門家の仕事として残るのだろうか。著者は専門家の未来について楽観視はしていない。どちらかといえば、読者=専門家は自らの手で新しい専門家像・専門領域を描きだせ、と鼓舞しているようにも感じられる。歴史を振り返ると、新しいテクノロジーの登場は新しいチャンスを生む可能性を孕んでいる。たとえばデジタルファブリケーションが施工プロセスを容易にするというのなら、建築設計者は施工を含めたプロセス管理をひとりで責任を持てるようになるかもしれない。そもそも人と人の役割分担を含むシステム・プロセスを再編しながら、時代を切り拓くというのは、建築設計者に向く作業ではないだろうか。専門家個人や専門家組織、専門家団体が、どのように生き残って社会のために働くべきかを掘り下げるには、2018年は格好の機会となるだろう。