建築から学ぶこと

2014/08/06

No. 436

ネットワークを活かす意味:仙台にて

仙台からほど近い場所にある企業の物流センターが竣工した。さまざまな自社商品流通のためのコアは、企業どうしを確実に結びつける役目を果たしている。この建築主にとっては既存敷地内の新築で、拠点機能が強化されたことになる。たしかに竣工披露の後に仙台市内で開催された完成祝賀会での祝辞からは、建築主と招待者との間に育まれた長い縁が感じられた。登壇したひとりは、3年前の東日本大震災直後の支援に感謝の言葉を述べ、別のひとりはお互いの先代経営者同士から始まる相互理解を慶んでいた。そこにある自然な敬意。当然ながら、企業経営を続けるにはこのようなヒューマンネットワークをうまく保つことが重要である。

企業の価値は、資産や業績、社員数といった数字で客観的に判断できるが、どのような縁を持っているかによって企業の性格/指向は形成されるものだ。取引をしているということは価値観が共有できているということでもあるだろう。これらは外からも読みとりやすい企業情報であり、そのことは商業店舗でもグローバル企業でも団体活動でも同じことがあてはまる。ネットワークは企業や団体の潜在的な力を高めるものだが、ネットワークが安定することでそれら組織の社会的責任が外延に広がっていることも間違いない。組織だけで閉じた論理というものは実は存在しないのだ。

それゆえに歴史の長い組織が縮小拡大・拠点移転すれば、地域に大きな影響を及ぼす。このようにネットワークを成立する条件を変えることでの有利も不利もあるだろう。ひとつの建築プロジェクト開始はそのような背景のもとに決断がなされる。そして変わらぬ場所の新しい建築、新しい場所の新しい建築のどちらにしても、ネットワークをうまく活かすことで、建築も長く生き続けることが可能となる。

佐野吉彦

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