建築から学ぶこと

2023/11/22

No. 894

根本を問い直すキャンパス

京都市立芸術大学がこの秋、京都駅北側すぐ東、鴨川の西に移転した。この地域は京都の市街地でも開発が難しいとされていた場所で、今回の移転は、京都市政にとっても、大学にとっても大きなチャレンジであった。そもそも、芸術の修学・研究拠点が挑戦心を欠いては話にならないはずで、そうした「共同する意思」が、地域住民と一緒になって、それぞれの未来を考えてゆくのは、画期的であり、京都だからこそできるアクションではないか。
キャンパスは東西の3ブロックにまたがっており、西には京都駅近傍の都市的な表情が隣りあい、東は多くの歴史を背負って流れる鴨川に接する。これらの、京都のあちこちに立ち現れる濃密な表情をさりげなく意識させつつ、さまざまな出会いのスペースが工夫されている。乾久美子さんらのチームがプロポーザルを勝ち取って設計に携わったキャンパスには、細やかさとダイナミックさの両面がある。
しかし、それは穏やかな解決で終わってはいない。チームの一員であった大西麻貴さんと百田有希さん(o+h)が語るところによれば、設計開始時に大学の学長であった鷲田清一さんから「エクストラオーディナリー」という言葉があったという。鷲田さんは「芸術の役割とは、社会で共有されている価値そのものが揺らいでいるときに、オルタナティブを提示することだ」と言い、「いざというときにこそ、根本的な価値を提示することが大学、芸術の役割だ」と加えたという(*)。できあがった建築の果敢なありようは、その言葉に大きく背中を押されているようである。
歴史のある大学が新たな地域と出会うことによって、新たな器を得て様々な専攻分野の位置関係が変わることによって、どのような変容を遂げるだろうか。それは建築の実験でもあり、大学の実験でもあり、芸術の実験でもある。

*現代思想5月臨時増刊号「総特集:鷲田清一」所収

佐野吉彦

歴史を背負い、未来を動かす。

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