2011/09/07
No. 293
またまた国の新たなリーダーが誕生した。あまり現実の政治について言及するつもりはないが、これで2代続いてきた理系出身の総理が退いた。彼らの評価は分かれる。たとえば震災直後と当面の原発をめぐる課題、将来の方向性について、理系らしい判断統率ができたのか、望ましい結果が生まれることになったのか。最後は理系だからという期待感はほとんどなくなったが、解決すべき問題群はごっそりと文系出身者の多い新内閣に引き継がれている。
その政権発足の直後に強い台風が西日本に「滞留」し、紀伊半島を中心に多くの被害をもたらすことになった。日頃から雨が多く、沿岸も山間部も災害時の救援救出ルートの細さが指摘されてきた地域だが、特筆すべきスケールの災害になった。日本は災害をあまた経験し、手を打ってきているようで、実は足りない部分がまだまだあることが明らかになった。地震への備えについては近年ずいぶん前進し、3月以降にさらに問い直しが進んだが、自然災害はそれに限らないのである。豪雪も落雷も恐ろしい。皮肉ながら、これはどの時代の政権も自然災害と正面から向きあうべきことを示すことになった。自然にかかわるリスクマネジメントを総理のリーダーシップの第一条件としてもいいくらいである。
ここでいま望みたいのは、政治家には総合的な観点からの政策実施、国民には科学リテラシーの浸透である。事実を数値に置き換えることや単なる情報公開、割り切った判断は、理系的思考のように見えて、そうではない。最低限の科学知識を身につけながら、それら基礎情報に基づいて事態をどのように判断するかを、新たな文系総理も国民もきちんと考えてみてはどうだろう。加えて言えば、災害から学ぶ知恵は、世界に発信する価値が十分にあると思う。