2006/02/08
No. 20
当然のことながら、企業活動には場所が必要である。そのなかで、企業が腹を決めて設備投資をしなければならないのは、本社オフィス、生産施設、営業拠点の3つであろう。つまり、コントロールし、ものをつくり、それを売るスペースで、それぞれの比重は企業によって異なる。製造業にとっては生産施設(工場)が重要だし、ファーストリテイリング<ユニクロ>やイオンの勝負どころは営業拠点(店舗)となる。テレビ局ではその3つは同じビルに収められることになる(本社+スタジオ)。ただし、いずれのケースも、本社機能を欠くことはない。むしろ、それをどのような建築として実現するかによって、企業の根幹が浮き彫りにされることになる。
とりわけ創業者の場合など、経営にどうしても「インパクトある物語」が欲しい。となると、本社ビルを印象的なかたちで表現することは、企業を印象づけるうえで効果的である。そこで、著名な建築家のデザイン力に委ねたり、技術的なダイナミズムを採用したり、ということになる。それが近代建築と近代企業、そして建築設計のレベルも相伴って成長を遂げさせることになった。ただ、どの企業でも大仰なかたちが必要なわけではない。状況に応じた適切な物語が選択されるべきなのである。
では、これからの本社ビル建設には何が必要だろうか。それは、企業の信頼性を積極的に表現することである。すぐれたデザインマネジメント、エコロジカルなアピールからはポジティブなメッセージがにじみ出してくると考える。あわせて、地域に立脚した企業として、積極的な仕掛けを行なうことも重要だ。また、コンプライアンスの視点から見て、ウソやあいまいさがある建設プロセスでは、誰に対しても説明がつかないだろう。もはや、株価を上げるためのアクロバット的な身ぶりも、法律違反してまで改装・増築するような姿勢は不要である。以上記したことは、テナントとして入居するビルや立地をどう選ぶかについても、同じように考えて良い。