2018/01/31
No. 608
さまざまな施設の複合化は、時代の必然かもしれない。駅ビルのように、駅施設に商業施設や公共施設を合体させるかたちもそう歴史が古いものではない。空港ターミナルビルの歩みも同様である。それらはじつに短いあいだに建築や都市の姿を興味深いものに変えてきた。一方で、駅前一等地に店を構えていた銀行店舗には、カフェを併設する試みが生まれたり、商業ビルの上階に移動したりしているうちに、そのうちに銀行の個人取引が電子化する流れが生まれ、店舗そのものが必要なくなる、という変遷をたどってきている。本屋やレコード店の看板は、いつのまにか駅前から消えている。スーパーマーケットのありかたも初期とはずいぶん違うものになった。
そのなかで、もともと複合化された小規模店舗であったコンビニが、さらに積極的な複合化を目指している。イートインスペース設置は定着しているが、発券業務をコンビニが入居して携わっている駅の例があったり、薬局を隣接させたり、24時間のフィットネスクラブ(ファミリーマート)、小規模保育園(セブンイレブン)、コインランドリーを併設させたりする試みが進んでいる。そのようにしてコンビニが生き残るのは街にはありがたいことで、働き方が多様化する時代にもうまく対応している。これは隣接業種を刺激するのではないか。既存ビルの改装も一層活発化することになるだろう。
以上に挙げたケースのなかには、当初とは発注者が変わっているケースもある。それだけに、建築設計者には新たなビジネスへの想像力が求められるだけでなく、安定的な都市景観を継承するために先を見た判断が求められている。事業の回転スピードがどんどん速くなってゆくなかで、建築物のライフサイクルとの関係をいかにうまく調停できるかの能力が問われている。