建築から学ぶこと

2005/10/12

No. 4

建築家が生き残る「方法」

まだ日常的には定着していないが、プロジェクト・デリバリーという建築用語がある。AIA (アメリカ建築家協会)がまとめた資料 Handbook on Project Delivery (改訂版2004)は、その手引き、プロジェクトの組み立て方を展望する本である。ここには、伝統的パターン(設計と施工の分離)・CM・デザインビルドなど、さまざまな発注方式とその効用が整理されている。そのなかから、眼前の仕事に取り組むときに適切な体制を整えなければならない、ということが示されている。建築家は、自分が構えている組織の論理によってではなく、いかに発注者にメリットのあるチームを整えるかが重要、という主張が含まれているのである。

これは建築家の生き残りを賭けた主張と言える。現代は、さまざまな専門家をプロジェクトに関与させ、かつ責任を分散・外部化させる傾向がある一方で、窓口をできるだけ一本にする (single responsibility) 傾向もある、とHandbook on Project Deliveryは記している。古典的な建築家像からすると危機である。そのなかで建築家が生き残りたければ、まずは発注者の近い側に立て、とAIAは考える。具体的なプロジェクトごとに「カスタマイズされた」プロセスを選択することと、建築家という職能が果たすべき役割と倫理に即した行動をとること。その双方の必要をAIAは認めている。

建築家の業務範囲、直面する困難は各国の事情によって異なる。しかしながら、建築家が専門分野についての継続的な修練をおこない(教育機関における教育と接続するものとして)、自らの能力が活かされる社会と遊離しない判断と行動をとることは、UIA (国際建築家連合)でも認識が共有され、実行に移されている考えである。日本の建築家も、建築団体もその方向を向いているはずである。

佐野吉彦

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