2018/07/18
No. 631
社会は災害に対しての備えを怠ってはならない。それだけでなく、備えがあることで社会の評価は高まることになるだろう。その策のひとつが、安全で災害に強い建築や都市を実現することである。生命の安全を守り、かつ被害を最小に食い止めるために、建築基準法や都市計画法などの法令をただしく適用する/させることは重要である。実際には、起こる災害はそれを上回るかたちで、不備を突く。そのフィードバックはさらに重要で、法令の改善によって、将来の危険に備えたい。実際に、1978年の宮城沖地震でのコンクリートブロック塀の倒壊ケースは、建築基準法に十分に反映されたはずだった。だが、大阪府北部地震では塀が各所で倒壊し、法にそぐわない事例がまだまだあることを露呈した。
その震災からの回復途上に、今度は西日本豪雨が甚大な被害を広域にもたらした。この週の西日本は雨でずっと覆われたために、各地でひとしく増水の危険が迫っていた。結果として暴虐は河川整備や砂防などの脆弱な部分を襲った。災害は、同時に、非常時における避難告知・誘導をめぐる課題、地域社会にあるネットワークの課題も問い直すことになった。ここに、今後の災害対策における重点事項が見えている。どの災害も、緊急・応急の対処、そして復興計画づくりへとステップを踏んでゆくだろう。それらが適切なスピードと柔軟さで進むためには、平時から地域社会・行政・さまざまな専門組織との間で、相互の連携と信頼関係が構築できていることが鍵となる。
いずれにしても、災害をめぐる実態は長期的視点で捉え、そこにある知恵をじっくりと汲みあげ、共有したいものである。連続した災害を総括するにはまだ生々しいが、日本が真に災害に強い国家(レジリエントな社会)であるための基盤はここから形成される。そしてそれは、世界各地で起こる危機に際しての情報と教訓になるだろう。