建築から学ぶこと

2018/08/29

No. 636

終わらない夏を、終わらせるには。

この夏は、7月の豪雨災害に続いて連日の酷暑が日本を覆った。それらはひとつながりであり、日本周辺にこれまでにない気候変動、それがもたらす災害事態が生じている。これを書いている8月下旬でも暑さはピークから降りていない。この困難な夏はこれからも到来する可能性もあり、インバウンド好調で何とか回っている日本の経済や、前向きのマインドにも影響しかねない。となると、悲鳴をあげているだけではなく、未来に起こりうる問題に早めに対応しなければならないだろう。
たとえば、気候変動の原因と、地球温暖化の進展との比例関係を特定すれば、理論的には解決策は見出せる。一方で、春季の黄砂も含めて眺めると、気候変動にかかわる事象は日本を含めた東アジアに連動して生じ、影響を与えあっていることは間違いない。広域の環境に関わる危機を乗り越えるには、ノウハウの共有、社会モラルの是正、交易のルールづくり、政治にある不安要因の除去など、多様な視点に基づく対策も含めて考える必要がある。
今年は、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の締結が大詰めである。RCEPは東アジア10カ国に中国やインドが加わった地域秩序の構築であり、重要なプレイヤーは見事に網羅できている(その点は、TPPや、中国の「一帯一路」以上である。)ここで取り決められる経済や貿易に関するルール策定から、環境における国境を越えた共通認識が生まれることも期待したい。それがうまくゆけば酷暑が解消、というほど環境をめぐる事態は甘くないが、自国がどのように生き残るかという視点だけでは、もはやどのような社会問題も解決できない。自然災害に苦しんできた日本は、建築を含めたいろいろな分野で積極的に提言をしたいものだ。

佐野吉彦

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