建築から学ぶこと

2021/05/19

No. 770

徳島の切れ味

以前なら徳島県と言えば阿波踊りで、ずっと変わらぬ集客力を有している。産業については農業のほか、大塚ホールディングスのグループ、日亜化学工業やジャストシステムなどの研究開発に強い企業の本拠として広く知られていた。存在感はこれからも変わらないとしても、それだけでは今日のような際立つインパクトには達しなかったかもしれない。

潮目が変わったのは、2010年代初頭に完了した、全県域における光ブロードバンド環境整備である。それ以降、徳島はIT先進県と評されるようになり、たとえば山間部にある神山町はサテライトオフィスの先鞭をつけ、スタートアップ企業が移住してきた。取り組み開始は2010年あたりであり、新型コロナウイルス感染症でようやく日本社会がリモートワークに本腰を入れるよりずっと早い。ちなみに神山町は人口4,605人で人口密度は26.6/km²でしかなく、この町の切り込みの鋭さには驚く。

その南に位置する上勝町は環境先進自治体である。2003年にゼロウェイスト宣言をして舳先を定め、そこから環境ビジネスの花が次々と開いてきた。2020年に開設された上勝町ゼロ・ウェイストセンターは、人口1,344人・人口密度12.3/km²の自治体として適切なごみの収集と分別・再生を行う施設であり、環境教育を実践する教育拠点(宿泊施設)でもある。2021年日本建築学会賞(作品)を受賞したこの施設は廃材建具の積極活用をはじめ、地域資源の徹底した活用にこだわっており、グローバルな発信力を持つ建築作品となっている(設計:中村拓志・NAP建築設計事務所)。

徳島県内のサテライトオフィスは今や14市町村に67カ所あり、最多の北海道(74カ所)に次ぐ2位である。一方で、当地は空・海・陸のアクセスも整えており、自ら「課題先進県」を自負する徳島の戦略はなかなかしたたかなものがある。

 

(註)人口データは20099月現在

佐野吉彦

上勝町のクラフトビール、そして明石のあなご

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