2021/11/03
No. 793
ドイツのポツダム大学のシュテファン・ラームシュトーフ教授は、ICPP(気候変動に関する政府間パネル)第4次報告書をまとめたメンバーのひとりでもある。最近の講演(*)で、専門である気候学の視点に立ちながら、地球を俯瞰的に見た気候変化、各地で起こる環境危機を精確に語り、まさに今我々はTipping Point(重要な分かれ目)に立っていると語っていた。夏の高熱・海面上昇・気流の変化それぞれは他の事象に影響を与えている。これから始まるCOP26の議論のなかで、温度上昇を抑え、危機を乗り越えるために大国による積極的なアクションを促しながらも、現状の取り組みの弱さを懸念していた。
この講演は、同じドイツのハイデルベルク市の招きで実現した。講演を受ける形で、同市のウュルツナー市長は、カーボンニュートラルの達成には地方自治体の創意が重要と述べる。実際、ハイデルベルクは都市計画や交通システムを通してのコンパクトシティ化や、税制・教育における制度改善などで人口増という成果ももたらすという好循環を生み出している。重要なのは都市間競争だと断言するところは、「ヨーロッパ人」らしい自立的感覚であり、豊かな歴史と研究基盤を活かす立場にある首長としての責任でもある。さらに、国をまたぐ協力も効果的だと述べており、視野の広がりを感じさせた。
現在の日本は、以前と比べると個人も企業も環境意識が高まってきた。大事なのは他の地域にある危機や、前向きの取り組みをさらに具体的に知ることだ。Tipping Pointの段階では、身のまわりに迫る危険を意識するだけではもはや十分でなく、地球全体の危険に際していかに的確に連帯するかがポイントである(SDGsでも実はそれを謳っている)。この日は私を含めて国外からもオンラインで参加していたが、国境を越えることの意義はますます重要になるだろう。
* October 30th,2021 @Triennial Conference, Heidelberg Club International