2007/12/26
No. 113
私自身の2007年の活動の記録が、いろいろなところで公開されている。まず、第83回で紹介した、サンアントニオ(米・テキサス州)で開催されたAIA(アメリカ建築家協会)大会でのOrganized Design Team in Japanという名の講演記録。日本の建築のつくりかた(Project Delivery)を概説したものだ。日本の設計組織がクライアントとの関係性のなかからどういう知恵を学び、組織を組み立ててきたか。掲載されている記事は、AIAのDesign-Build委員会委員長を務めるBill Quatman氏が、日本的な方法へのおおいなる関心のもとに整理したものである。そこにある普遍的な面を彼は見出してくれている。
この大会ではIntegrated Practice(情報を統合することによって進める実務手法)がクローズアップされ、日本でもその後関心が一層高まってきた。それとともにBIM(Building Information Modeling)の可能性をさぐる動きが活発になってきた。私はBIMにかかわる講演の演壇に立つことになり、そこでこの技術の面白いところは乱世を切り開く力を持つことにある、と語った。技術革命が起こるのか?私は日本の建築のつくりかたも組織風土まで変えてしまえば面白い、と考えていた。なお、Integrated Practice はその後Integrated Project Deliveryと記されるようになった。こちらの語感のほうが時代を変える可能性を含んでいるように思う。
さて、第109回・110回で扱った片岡安についての講演は興味深い経験だった。財界の方々が多い場だったので、不遜ながら建築家や理系経営者の底力をアピールしようという思いもあった。講演の後、片岡さんは私の父の仲人でした、という方が現れるなど、片岡は縁を大事にしたからこそ成果を残せた、と理解した。少しばかり気負いを反省した。
そう考えると、この連載を書籍化できたのも縁というべきものだった。本の装丁を担当したアーティストの山本浩二氏とは長いつきあいだが、ゲラをきちんと読みこんで、明瞭な表現をしてくれた。彼は協働型というのでなく、協働者の考えを敏感かつ正確に嗅ぎ取り、協働の論理を組み立てることができる人というのが正しいだろう。縁は偶々生まれるのが面白いけれど、異なる同士がきちんと縁を組み立てる精神を持つことが熟成した成果を生むことにつながる。それを実感した1年であった。