2010/12/15
No. 258
COP16 (*1) が前向きな方向をとりまとめて終了した。まだまだ各国の駆け引きが続くものの、地球温暖化に向けて先進国と途上国の足並みが少しずつ揃ってきたと信じたい。2010年は名古屋でCOP10 (*2) もあったし、日本と日本人にとっては環境問題が以前にも増して身近になった年ということができるだろうか。環境商品の減税効果も大きかったし、酷暑の夏は気候温暖化を実感する面でおおいに寄与した。でも、それは手がかりに過ぎない。われわれはまだまだ変化の実態を書物や画像などの手段によって知ることが多いのだ。ともかくも、ひとまず<CO2排出量と温度上昇との間に蓋然的な比例関係がある>という認識を「共通の拠りどころ」とするようにはなった。
実際のところ、本当に地球に何が起こっているのか、何が原因なのか知りたいと思うものの、遠隔地に起こることや過去の経緯については、想像力に頼るしかない。「共通の拠りどころ」については、サンプリングや推測方法の違いによって結論が変わるのではないかと疑う異見が相変わらずあるが、すべてが実験室外で起こっている環境問題において正確な解を求めることはどこまで行ってもむつかしい。議論が続くこと自体は重要なことであるので、少なくとも、環境問題をめぐる言説が経済的な有利不利を導かないように注意しておかねばならないだろう。
一方で、ここまで問題点が認識できた以上は、長続きする環境対策を選択することこそ重要だと考える。環境問題は個人の問題に帰するものとして、ライフスタイルの改善が必要と認識するのは間違いではない。それゆえに、エコブームで生まれる思いつき商品やデザインの悪い住設機器がさらなる無駄な消費を生まないかどうかを監視しなければならない。そこからが建築や都市計画が知恵を絞る局面。環境問題解決のためのひとつの機能ではなく、ただしく技術を統合・バランスさせる役割を担うのが、建築であり都市計画である。