建築から学ぶこと

2021/07/28

No. 780

足跡を残す夏になるだろうか

ひとまず日程通りにスタートしたオリンピック。これに続くパラリンピックを含めて、アスリートのモチベーションが高まる国際大会は、これまで、観る側にも手ごたえと記憶を残す機会となってきた。日本が開催国である今回は、日本に住む者がグローバルなフレームを実感する格好の機会になるはずだろう。それは政治家もメディアも十分わかっていたはずだが、今回はいつしか感染防止による安心安全が喫緊の課題になり、かつ書くのも情けないスキャンダルで行きつ戻りつしたことで、直前の盛り上がりを欠くものとなった。だからと言ってオリンピックは身近で開催されているのだから、いつもの大会報道のように、日本選手の活躍をマークするだけでよいはずもない。やはりオリンピックは世界とつながる意義ある行事なのである。

開会式では、バングラデシュの企業家であり、ノーベル平和賞受賞者であるムハマド・ユヌス氏がスポーツを通した社会課題解決に果たした貢献が顕彰されたり、オリンピックの意義について語るスピーチがあったりした。震災やコロナの被害者、1972年のミュンヘンオリンピックでのテロ事件の死者への追悼があり、人権の重要さについてもソフトながらメッセージもあった。環境問題への言及は少ないけれども、世界が共有する課題を含めた中身はあったのではないか。だが、メディアは見た目の華やかさの報道に重きを置いていて、なかなかその「芯」にきちんと触れてくれない。演出の問題もあるが、開会式は日本という場から世界に、かつ国内にも連帯を呼びかける効果的な場であるはずなのだ。

ところで並行して、東京ではオリンピック会場の外で、東京ビエンナーレ2020/2021はじめ多くのアート展示が同時期開催されている。ほかにも「ポコラート世界展」(アーツ千代田3331)や世界の女性作家が揃う「アナザーエナジー展」(森美術館)など、世界に呼びかけるメッセージをこめている。そうした取り組みを含めて、確実な足跡が残ってゆく夏になることを期待したい。

佐野吉彦

ポコラート世界展(アーツ千代田3331エントランス)

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