建築から学ぶこと

2019/03/20

No. 664

沖縄にある可能性

沖縄は文化的にも、生態学的にもきらきらとした個性を宿している。沖縄本島を中心とした諸島には、古来、中国や環太平洋とも豊かなつながりがあり、さまざまな文化が和やかに穏やかに花を咲かせている。一方で地政学的に重要だが脆弱な沖縄には、歴史の翻弄もあった。大戦以来、アメリカの影響に切れ目はないが、それも沖縄の特性を示す要素なのであろうか。沖縄は奥行きが深いところである。
その玄関口である那覇空港の旅客ターミナルに、先ごろ「際内連結ターミナルビル施設」が開業した。1999年の国内線ターミナルビル新築から時を経た2014年、少し距離を置いた場所に開業した国際線ターミナルが弾みをつけ、そして今回、「際」と「内」の間が繋がることで横に長いひとつのビル(延15万㎡) となった。当初からの構想の延長線にあるとは言え、社会情勢が後押しして完結に達した。そこには、国内からの渡航以上に、大きな伸びが続く海外からの来訪者(ほどなく年間300万人を突破する見込み)の勢いがある。すでに、今や一年を通じて観光客を惹きつけ、春先は日中韓の野球やサッカーのキャンプの聖地である沖縄。4時間余りでバンコクとつながる東アジアのネットワークの結び目は、今回の開業でますますパワーアップした。まさに、沖縄の空は洋々としている。
さてその沖縄の多様な展開をうまく産業振興に活かす展開はあるだろうか。たとえば恩納村にある沖縄科学技術大学院大学の学術レベルや、教師や学生の国籍の多様さは地域に新しい眼差しを提供するはずだ。もちろん琉球大学の文理をまたぐ地域研究は重層的な厚みを持っている。そこから各研究分野・地域素材を掘り下げてスタートアップを活性化するなら沖縄はさらに注目を浴びるだろう。沖縄には、前を向く取り組みにおいて最前線であることを期待したい。

佐野吉彦

空港の、みずみずしい空間「ふくぎホール」

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