2021/03/24
No. 763
私は母校の建築学科の同窓会長を務めていることから、先ごろ卒業式に参席した。自分の時代のことは記憶が薄れているが、全学が集まる卒業式典の後に教室に集まり、学科ごとの学位授与式や成績優秀者表彰があるという流れになっている。新型コロナウイルス感染症流行が始まった昨年3月は全学集結が中止、学科は成績優秀者表彰のみで、研究室で学位記を手渡すという流れだった。今年は少し元に戻り、密を避けるために全学の式典は2回に分けて挙行、私が参加した学科の部は、3つの教室に分かれてネットでつないで開催された。ほかの大学はどうしていたのだろうか。
さて、私はここでおおよそ次のような挨拶をした。本学科の課程で学び達成した成果を誇りとして堂々と次のステージに歩みだしてほしい、といった口上に、<最後の一年には新型コロナウイルス感染症と向きあうという特別な経験をしました。皆さんは、そこにあった多くの困難を賢く乗り越えただけでなく、同時に新たな知見を獲得することができたのではないでしょうか。もちろん、私も同じことを感じています。>と続けた。
4月からは就職する者もあるが、多くが大学院に進学する。おそらく、最終学年でイレギュラーな事態に向きあって多くを感じたことが、視点に深みを加えてくるであろう。そこは大いに期待するところだ。挨拶のなかで<予想外の社会の変化、甚大な災害に見舞われたときこそ、建築の専門家がまっさきに汗をかく出番です。>と予言のように述べたのは、今年一年の経験が確実に次のステージで力となることを期待しているからである。一方で留学や、直接のグローバル交流機会がしばらく制限されているところは、この世代は損をしている。それぞれが専門家として成長するために、世界の広さを感じ、同じプロフェッションの魂に触れ、カルチャーショックを受ける機会は必須であり、どこかのタイミングで経験を積ませたいものである。