建築から学ぶこと

2019/08/28

No. 685

大人の、いい手本が見たい

今年は政治の当たり年なのだろうか。国内では春の統一地方選挙・夏の参議院選挙があり、大阪でのG20をはさんで国際政治が何かと沸騰してきた。この連載はそれらへの個別論評はしないポリシーであるが、最近の政治手法全般についてはコメントしておきたい。そもそも、政治家は国や政党の立場を越えて、同じ職業的責任・使命を背負っているはずである。だから、それぞれは専門能力を高く維持し続けるべきだし、個人の努力への敬意を相互に持たなければならない。残念ながらこのところ、どちらの面でも着実さが衰えている。政治に限ることではないが、情報が容易に入手できる社会が影を落としていて、人を育てる熱意が欠けているようにも感じる。
さらに、原則といったものへの敬意も欠けている。どの国も党派も一旦決めたルールに対して淡白な傾向がある。それを柔軟さと評価することもできるが、逆に交渉において落としどころのない議論を誘い出すことにつながっていないだろうか。ビジネスにおいてぎりぎりの合意ができなければ破談でしかないが、国家間はそういう結果を導いてはいけない。経済や環境は現実に依存しあっているし、国際機関とシステムが一応は有効に働いていることでカタストロフィーには陥らないが、複数国で集まっても有効な一手を出せず、二国間では一方的な会話しかできないというのでは情けない。異なる考えはうまく包摂し、まとめあげてこそ大人である。
とかく政治家は、結果がすべてだと言われがちだが、果たしてそうなのか。日常におけるオペレーション能力がスムーズであってこそ、人は信頼を寄せることができる。たとえば、貿易収支が黒字になることは大事だが、人を大切にしない国は一流ではないだろう。それは建設業を含む製造業にも、もちろん企業経営にも通じる話である。ぜひ、手本になるような交渉術を見たいものだ。

佐野吉彦

それでも、世界には希望があることをこの本は語っている

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