建築から学ぶこと

2024/01/17

No. 901

災害から守るかたち

1月17日で阪神淡路大震災から29年が経過した。厳冬の自然災害という点では今回の1月1日の能登の地震と共通する課題が見えている。前者が大都市圏を襲い、後者は孤立集落を抱える地域を直撃したという違いはあるが、避難態勢を取る時間が限られた点では共通している。29年の間に東日本大震災や熊本地震などの経験を経て、住民どうしの災害時の連携、ボランタリーな活動は成熟が進んだものの、水や電気の仮供給や避難場所の設営などについてはスムーズな初動であったとは言えない。正月の襲来というエクスキューズはあるにしても、である。
私自身の阪神淡路大震災の被災経験を振り返ると、政府中枢が現地の事情をとても理解できているようには思えず、これなら地方に主権と財源があった方がアクションは早いと思ったことを記憶している。震災があった1995年の1年前は広域連合が制度化され、国会では地方分権が決定したというタイミングだったので、そのような感触を持ったのだろう。その後道州制の議論は高まったが、災害対応の視点は前面に出なかったと思う。やがて議論自体も勢いを失ったが、2020年のコロナ流行の際の調達難で再注目されることになる。これだけ災害や感染症の苦境が頻発するのだから、非常時対策というテーマに絞っても道州制的なありかたの整備はできないものか。民間の全国団体ではブロック的な集まり方があるから、それを有効活用する手もある。一方で、災害の主管庁を創設すべきという主張もあり、真剣な議論を期待したい。
ところで、能登は幾度かの地震に限らず多くの風水害にも見舞われてきた土地である。倒壊した木造の民家は、すでに幾ばくかの損傷を宿していたのではないかと言われている。となると住宅の耐震化の対策を取るとともに、日常的な安全検査推奨は一層重要ではないだろうか。個人資産と経済活動を守り、建築という文化を守るためにも必要なことである。

佐野吉彦

邪気を払う「卯杖(うずえ)」

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