建築から学ぶこと

2011/03/30

No. 272

震災が投げかけるテーマ (続編)

震災状況が次第に明らかになってきた一方、2週間を過ぎてなお、初期の事態が進行中である。そのあいだに「戦前昭和の社会 1926-1945」(井上寿一著/講談社現代新書)を読んでいたのだが、1923年の関東大震災から1941年の太平洋戦争開戦に至る期間に小康と激変を細かく繰り返していたことが語られている。そこには理想社会論が登場し、平準化志向がうまれ、国際化が進展しつつ日本回帰があり、加えて政党政治不信があった。それらを阪神・淡路大震災から今日に至る経過と重ね合わせてみると、同じことを追いかけていて暗示的ですらある。かつての日本の知性は同じようにリスクを避けようと懸命に務めていたが、戦争は避けられなかった。その失敗から、破局に至らない知恵は身につけたものの、今度は予想しない事態に振り回されている。

振り返れば、リーダーシップがあってもフォロワーシップが効かなかった例があり、その逆もあった。BCP(事業継続計画)がうまく発動した一方で、機能しなかった例もある。分かったことは、知恵は備わっても、それをうまく活用できるかどうかは組織や人の基礎的能力に帰納することであった。それは本来、平時に鍛えておくべきものであろう。事態が安定したら、備えるべき能力の本質をもう一度掘り下げてみるべきだと思うのである。

前号で述べたように、今回はソーシャルメディアの進展があり、また都心の節電と計画停電が、皮肉ながら都会から被災地に意識を一層向けることとなった。この不思議な成りゆきはどこかで活かされてゆくことになるだろう。また、日本がこの困難をどう乗り越えるかに国際的な関心があることについても触れたが(こうしたときの過剰な反応はお互いさまではあるが)。いま重要なミッションは建築や土木の専門家がデリケートさを伴い、互いに連携しながら再生を進めてゆくことである。そこには、日本が世界に向けて提供しなければならない知恵を含むからである。

佐野吉彦

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