2007/05/16
No. 82
ゴールデンウィークの後半、サンアントニオに出かけた。AIA(アメリカ建築家協会)大会に参加する目的だった。テキサス州には、ヒューストンとダラスというパワフルな大都市があるが、第3の都市・サンアントニオは優しげな風情に特徴がある。人口120万で観光客が1,000万人という都市の魅力のひとつは、リバーウォークという、川の水面に沿う細い散歩道である。歩いて良し、走っても良し。緑も豊かで、船(渡し舟)をすべらすのも快適だ。ホテルやレストランが散歩道に地下階の顔を出しており、コンベンションセンターにも歩いてつながる。良く練られた複合スペースと言えよう。さらに言えば、頭上の道路橋の裏面まで美しいのだ。
もともと暴れ川のほとりの交易都市。1921年には都心を洪水が襲った上に、大恐慌。このさい川の湾曲したところは埋め立てるかというところを、水路のショートカットをつくり、迂回路をつくるなどして、水と共存する方法を探ってきた。1929年のリバーウォーク誕生から、1968年の博覧会で弾みがつき、軍事施設の大規模移転を経て、今日のような観光都市のかたちが醸成されてきたのである。
サンアントニオのもうひとつの魅力は、ひとつひとつの建築の味わいである。20世紀初頭のゴシック・リバイバルもいいし、マジェスティックシアターの華麗な装飾もいい。ここにある建築の多様な軌跡は、もともとのスパニッシュ・近接するメキシコ風に加えて、ドイツ系が多くを占めたという歴史のブレンドによって生み出されている。
さて、そこでの、そこならではのコンベンションである。ここで、参加者の知恵とビジネスマインドもブレンドされる。この数年、INTEGRATED PRACTICE(情報を統合することによって進める実務手法)が大会での耳目を集めているが、重要なのは、個別の技術よりも、魅力的な成果に導こうとする精神だ。サンアントニオはそのことを教えてくれる場所である。(次週へ続く)