建築から学ぶこと

2006/02/01

No. 19

旧暦とともに生きる

今年は、新暦1月29日が旧暦(太陰太陽暦)の正月。中国で(中華街でも)言う春節祭であり、この日が春(1月-3月)の始まりとなる。新月のこの日、漆黒の闇から昇る太陽が初日であり、以後月の満ち欠けとともに29日もしくは30日経つと月が変わる。そうなると西暦(太陽暦)とはズレが生まれるので、その調整のために19年に7回の割合で、閏(うるう)月が入る。今年は閏7月があり、7月が2回来る。つまり秋(7-9月)が長い年になる。

旧暦は明治5年に廃止されたのだが、旧暦とともに江戸的な時間感覚が消えたと言われる。西暦は欧米との交易に便があるということが採用理由のひとつだが、年号については温存された。結局は、明治政府は自らの支配権を確立するためにこの政策を取ったのかもしれない(月給を払う回数を毎年同じにしたいという理由もあったとか)。

最近になって、旧暦を見直して大切に扱おうという傾向が生まれてきた。旧暦が入ったカレンダーも目につく。その意義の1つは、季節感との符合である。旧暦の3月3日(桃の節句)は本当に桃が咲く季節で(今年は新暦3月31日)、旧暦の五月雨は梅雨の頃となる。七夕は、上弦の月が天の川の中に入り、銀河の淡い光をかき消すため、織姫と彦星が川を渡れるようになるというわけである(今年は新暦7月31日)。旧暦は日本の文化と歴史を実感できるものさしと言える。2つ目の意義は、アジアとの一体感。旧暦で時の流れを認識することは、それを用いるアジア諸国との関係を円滑にするであろう。

西暦は太陽の動きに従い、旧暦は月の動きに従う。桂離宮を極みとする、月を楽しみ、月とともに在る日本の伝統的建築を理解するために、旧暦の意識は欠かせない。2つの暦を持っていることで、豊かな自然観・建築観が生まれるのではないか。それが意義の3つ目である。

佐野吉彦

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