2019/02/27
No. 661
BELCA賞主催:ロングライフビル推進協会、ロングライフ部門[①]とベストリフォーム部門[②]の2部門)は、建築の長寿命化にかかわる努力の顕彰である。先ごろ発表された第28回の対象建築物の大勢は民間事業によるもので、施設所有者・運営者の健全経営が鍵を握るラインナップだ。傾向のひとつに、自社オフィスビルである御堂ビル[①]や、一般の立ち入りを前提とするMOA美術館[②]やサントリーホール[①]のように、当初の機能をぶれさせないために注力しているものがある。もうひとつに、霞が関ビルディング[①]や福岡銀行本店ビル[①]のように、建築自体の意味を、時間をかけてスライドさせているものがある。霞が関ビルディングは高層テナントビルの先駆け(1968)としての性格は変わらないが、足元に広がる空地が、隣接する旧文部省庁舎を含む再整備ビル(霞が関コモンゲート)につながることにより、霞が関・虎ノ門エリアに親しみやすさが生まれている。金融機関としての生き残りに成功した福岡銀行は、スノッブな表情だったピロティを、市民に開いた場に変えた。これらは経営本体の変革なのかもしれないし、社会の要求に応えた変化であるかもしれない。この2プロジェクトでは、人の動きを交えることを通じてビルの潜在能力が引き出されているのだ。
一方、山梨文化会館[①]は幸せな姿で1966年以来ずっとそこにある。この地で、丹下健三はこれからの都市のありかたを雄弁に語ろうとした。たしかに社会全体は大きく変化したが、甲府の街はプログラム通りに変貌を遂げたわけではないだろう。しかし、メディアの地盤も低下する流れがあっても、名建築の価値は大切にされながら手を加えられ、生き続ける街のランドマークとなった。つまり、BELCA賞の意義とは、これまでの顕彰よりも、これからへの意思の確認であるのだろう。前進力を与える表彰と言ってよい。その証拠に、過去の受賞建築のほとんどは、その後も着実に活用と改修が続けられているのだ。