建築から学ぶこと

2020/10/21

No. 742

世界とつながるシステムとアクション

今年のノーベル平和賞は、国連世界食糧計画(WFP)に与えられた。国連とその機関が授賞対象となるのは珍しいことではなく、国連難民高等弁務官事務所も2度の授賞がある。世界をつなぐシステムとアクションには、つねに熱い眼差しが向けられる。

WFPの授賞理由については、<飢餓と闘う努力と、紛争の影響を受けた地域の平和のよりよい条件への貢献、戦争や紛争の武器としての飢餓の利用を防ぐための努力>と述べられており、これまで果たしてきた持続的なリーダーシップが評価されている。加えてWFPCOVID-19に向きあって一層の取り組みを強化している。平和賞にはその時代の危機を乗り越えるメッセージが含まれるもので、ここでは感染症に限らず、いま世界が共有する危機に際して一層の強い協調を促しているのではないか。また飢餓の撲滅は国連が推進するSDGsの項目にもあり、その最前線である専門機関・WFPを顕彰して国連の取り組みを後押しする意図もあるかもしれない。UIA(国際建築家連合)は、国連のSDGs推進や、国連人間居住計画の活動を専門的に支えており、その取組みも加速するだろう。

ところで、SDGsの目標には、理系寄りの目標も、貧困や教育・ジェンダー・社会的平等・平和構築といった文系寄りの目標も含まれる。吉見俊哉さん(東京大学大学院教授)は、こうした地球が抱える課題を乗り越える人材を育てるには、現在の大学のような文系理系の仕分けではなく、そのどちらも見とおす学びが必要と考える。それゆえに、日本の大学は積極的に「地球社会という認識地平の中での価値の転換や創造の基盤」づくりを目指すべきだとしている(「大学という理念―絶望のその先へ」東京大学出版会2020 より)。今年のノーベル平和賞がこうしたチャレンジと連動して、背中を押してくれるといいだろう。大学を含めて、世界とつながる意識は重要なのである。

佐野吉彦

世界とつながる窓(東京国際クルーズターミナル)

アーカイブ

2024年

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

お問い合わせ

ご相談などにつきましては、以下よりお問い合わせください。