2017/05/31
No. 575
芦原義信さん(1918-2003)の作品展「芦原義信 建築アーカイブ展―モダニズムにかけた夢」が武蔵野美術大学美術館で開催されている。図面と写真を中心にした会場構成はとてもわかりやすく、芦原さんの空間そのものという印象である。芦原さんは大学キャンパスの大半の棟を設計しただけでなく、ここの建築学科の創設にも関わった。文字通りホームグラウンドであるこの大学に2013年、生前の図面などが長男である太郎さんの手で一括寄贈されている。凡そ20万点ほどあるという。今回の展示はそれをもとに積み上げられた学術的成果である。大学キャンパスをメインに据えながら、設計図から発するメッセージとプログラムについて分析がなされている。作品展としての出来ばえ以上に、これから資料の読み込みのさらなる深化が期待できる。
今回の、芦原さんというひとりの建築家に迫るアプローチは、京都工芸繊維大学による村野藤吾研究と響きあっているかもしれない。近代建築にかかわる資料を位置づける作業としては、金沢工業大学建築アーカイヴス研究所、国立近現代建築資料館などの組織による取り組みがある。一方で、弘前における「前川國男の建物を大切にする会」や福岡の「福岡建築ファウンデーション」は地域の知的資産を再評価しようとする視点に立つ。建築家の足跡をつなぐ「ヴォーリズ建築文化全国ネットワーク」や、世界遺産のリストに加わった「ル・コルビジェの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献」の成果は、建築が揺り動かした近代社会への関心を呼び起こしている。
こうした活動のバリエーションの広がりには目覚しいものがあるが、そこには近代建築が何を目指し、どのような知を築いたかを探る情熱がある。それぞれが、これからの社会にとって有用な知恵を探っている。