建築から学ぶこと

2020/11/04

No. 744

リーダーとなるために

大山平一郎さんが指揮したブルックナーは、脇役になりがちなヴィオラ・パートの存在感が際立っていた。大山さんはもともとヴィオラ奏者ということもあって、曲全体のバランスの中でこのパートが果たす役割を明瞭に伝えたに違いない(註1)。別の日のコンサートでは、バッハの宗教音楽演奏の第一人者である鈴木雅明さんが珍しくシューベルトを振った。弦楽器から弾みのある「歌声」を引き出していて、とても美しい響きである(註2)。実はどちらの指揮者も代役の登板だったのだが、自分ならこうやるよ、という意思が見えた見事な仕上がりだった。

このように、リーダーシップが明瞭であればチームをうまく動かすことができる。そうしたリーダーは、自らの得意分野だけを贔屓にしてはいない。だが、人はしばしばつまらないことを言う。たとえば官僚出身の政治家だから彼らをうまく操れるのだとか、現場をよく知っているから地に足の着いた経営ができるのだとか、キャッチャー出身の(野球の)監督だけに、グラウンド全体が良く見えているのだとか。実際には、得意分野の視点に拘っていたら大局的判断はできないはずで、それぞれが評価を得たのは、普遍性のあるリーダーとなるための修練経験があったからではないか。

ところで日本の建築教育はリーダー育成の視点を持っている。日本のやりかたの特徴は、デザインまで包括的に建築を学ばせるところにあり、そこに、プロジェクトを統括するリーダーの基盤を形成する意図があると好意的に理解している。実際には、卒業から実務に就くあたりから専攻も経験も細分化してゆくので、継続的にリーダーシップを身につける必要はある。とりわけ、リーダーシップのない建築設計者などありえないのだから。

 

1 ブルックナー交響曲第4番

大山平一郎指揮関西フィルハーモニー管弦楽団 2020.10.29 シンフォニーホール

2 シューベルト交響曲第2番・第4

鈴木雅明指揮NHK交響楽団 2020.10.28 サントリーホール

佐野吉彦
公演の様子

平河町ミュージックス第49回:青柳いづみこ(ピアノ)+本條秀慈郎(三弦)、 高橋悠治作品で切り結ぶ。2020.10.22

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