2007/10/17
No. 103
当面の話題からは遠ざかったが、日本橋上空の高速道路を撤去すべしとの動きがあった。そうなれば東京の中心・日本橋に本来の景観が蘇るという主張と言える。なるほど日本橋川の暗い水面には魅力が乏しい。ソウルの清渓川での取り組みを見るとき、一気に撤去して親水空間を整備することに技術的な困難はなさそうである。ただ、手をつけるのはそこだけなの?という点で、この提言には冷静な検証が必要である。道路体系のなかでの交通の振り分けをふまえているのだろうか。そして、どうしてもジャマなのかどうか。
思うに、戦後の繁栄を支えた高速道路の功績は、日本橋が果たした役割と同等であり、まだ十分現役である。土木構築物としてそう簡単に棄却するものでもないし、機能的には優れたものである。加えて、濠にもぐったり、海を越えたり、頻繁に出入り・分岐したりする首都高は世界的にも個性的な空間。快い驚きに満ちている。首都高は、多様な景観とスピードで成り立っている東京にとって、魅力的なメニュー、独自の景観である。高速道路を地下化する手はあるが、ドライバーにとって退屈なものになりはしないか。
私は、現実にあるものをうまく使いながら適切な展開をまず考えることを優先したいと思う。たとえば、高速道路の車以外への一時開放というのも一案だ。週末をウォーカーとジョガー、自転車に提供すれば、道路は誰にでも利用可能な空間に変えることができる。
そして、先ごろ開催された「東横堀川ライトアップ デザイン・アイデアコンペ」が参考になる取り組みだ。これは阪神高速道路とそれが光をふさいだ大阪の川が対象で、日本橋と同じような状況を扱っている。コンペのねらいとして、暗い路盤裏あるいは水面をライトアップによって素敵な空間に変える提案が求められている。他の手法との適切な組み合わせによって、この場所を基点とした地域づくり、高速を言い訳にしない景観づくりにうまくリンクできるかどうか。興味深いテーマだ。