建築から学ぶこと

2015/10/14

No. 494

つながることの意味と可能性

市立吹田サッカースタジアムが竣工した。この施設は「スタジアム建設募金団体」が資金を個人や法人から幅広く募集して建設し、大阪府吹田市に譲渡されるという手順を踏んできた。ベースに民間の活力と心意気を置いたわけである。スタジアムは主に<ガンバ大阪>のホームグラウンドだが、地域のスポーツ振興のためにさらに豊かな使い方を企画してゆくことになる。募金を始める当初にそのような趣旨が謳われており、4万人を収容できるスタジアム完成が終点ではなく、ここが静まり返るような日がないよう、知恵を絞る道が続いてゆく。このスタジアムに期待される理想の姿には、関係者が地域に根差してゆこうとする意思、拠金した人とのあいだに続くネットワーク力が支えとなるだろう。そのようにして、これからも時間をかけながら、他に例のない公共施設のロールモデルが結実するのである(コンストラクションマネジメント:安井建築設計事務所)。

Jリーグの育ての親(元チェアマン)であり、地域とスポーツの関係を理論的に掘り下げてきた川淵三郎さんはこの取り組みに大いに賛同して、自らもこのスタジアム建設募金団体の理事を務めてきた。長らく日本のスポーツ施設は、とくにゴルフや野球等のケースに特に見られたように、当該関係者のロジックとネットワークの中で閉じる傾向があり、地域との縁という視野が限られたままだったと思う。Jリーグは当初から地域とのつながりを基礎においてきたのだが、スポーツ全体として、また文化に関わるいろいろな活動においても、その方向に動く大きなうねりが生まれつつある。これこそ川淵さんの見立て通りである。一方で、つながりとは単に人と人の交わりだけではない。たとえば。優れたゴルフ場の圏域が地域環境に寄与する可能性も、もっと社会に向けたメッセージを発信してよいかもしれない(今年の大村さんのノーベル賞に繋がる微生物の発見も起こる)。つながりかたにはさまざまなバリエーションがあり、そこからいろいろな議論や展開が広がる。

佐野吉彦

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