建築から学ぶこと

2018/02/28

No. 612

社会の転換期を乗り越える局面

この数年、訪日外国人は、2000年の500万人から大きな伸びを示し、2016年には2400万人に達した。その勢いはまだ続いている。一方で日本の在留外国人は、2017年の政府発表のデータ(2016.12調査)では、約247万人を数える。これは日本の人口比では1.8%程度に留まるが、2000年の159万人、1.3%からは着実な増加である。注目すべきなのは毎年の外国人移住者数(流入数)で、2015年時点では独、米、英に次いで世界第4位の30万人であり、日本への移住は上昇傾向が続いている。こうなると、個人の尊厳に基づく多文化共生社会をしっかりとつくりあげる努力が期待される。
また、これらの動きは日本の産業構造や雇用形態を確実に変化させる。だがそれは増加する数字だけの話に留まらない。いま時を同じくしてAI技術の定着が進みつつあり、その影響がじわじわと広がってゆくからだ。これから先の外国人の雇用は、日本の人口減・高齢化の補完に役立つという単純なものではなくなる。希望とともに移り住む者が職を失うのはやはり避けたいので、技術発展や市場活性化のための「高度人材受け入れ」策に加え、いま単純な作業に従事している外国人労働者のスキルアップの機会を用意することも必要ではないか。日本は二重の意味で重要な局面にさしかかっている。
日本に限らず、AIはあらゆるプロジェクト/プロセスの中で欠かせない要素になり、もはや後戻りすることはない。見方はいろいろだが、AIは企業の労働力の25-30%を代替する可能性があると言われる。その対象は日本人も外国人も同じである。資格を持っているがゆえにその資格に見あう仕事しかできないというゾーンも微妙かもしれない。人材を活かすには、教育レベルを高めて状況変化への対応力を高めたり、新たな市場に人材を移してゆく流れを整えたり、策はいろいろある。それらに成功すれば、AIは社会に好影響をもたらしたということになるだろう。

佐野吉彦

AIをめぐる状況を冷静に見つめる本。

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