建築から学ぶこと

2010/10/27

No. 251

これからの<結び目>

羽田空港の新しい国際線旅客ターミナルがオープンした。成田の開港以降、いくつかのアジア線に限られていた羽田が、旅客と貨物両面で外へ向けて再び表玄関を開くことになる。1978年以来の国内線特化時代とは、さまざまなアクセスが整備され、海外とのコネクションが日常的になっていった時間経過であった。頻繁に発着する国内線、都心や横浜、関東一円を結ぶ地上交通という「紐」が、新しい「結び目」に自然なかたちでつながっている。すでにかなりの便利さであり、成田や関空での、ゼロからのスタートとは異なる。特記すべきは新しいターミナルビルの建築発注方式がPFIであったこと、滑走路建設において技術的なチャレンジがあったことであるが、羽田の環境は2010年10月に向けて着実に整えられていったと振り返ることができる。

それだけに、結び目そのものが充実すること、紐が一層太いものとなることへの期待は大きい。だからこそ、便数や利用者数の数値拡大を目指すよりも、まず渡航・空輸の動きそのものを充実させることが必要ではないだろうか。重要なポイントは、出も入も一回きりの渡航・空輸ではなく、数次におよぶ国際的な関係づくりを促進することである。「結び目」の拠点能力、あるいは必要となる施設は、それと平行してさらに内実が整えられてゆくであろう(ちなみに、世界的に見ても、利用者が真に満足できる空港はそうはないものだ)。

日本が持つ前向きのテーマとして、国は健全な外交関係を維持活用する能動性を発揮すべきだし、創造性のあるビジネスマンや芸術家は国際的なプレゼンスを獲得する積極性を持つことが望まれる。羽田に留まらず、もちろんどの地域の空港であっても、ターミナルの能力とは人の力そのものであり、それを育てる国や地域の力でもある。効果的な「結び目」は「紐の質」が決め手となるであろう。

佐野吉彦

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