2022/06/08
No. 822
6月の初め、前田記念工学振興財団(前田又兵衛氏他が設立)が事業推進している「前田工学賞」の授賞式に初参加した。この賞は1994年に始まり、10年後に山田一宇賞が加わった2賞を通して、「土木及び建築に関する学術研究において著しい成果をあげた研究者を顕彰」するものである。今年は両賞合わせて7名で、この場で賞状を受けた研究者は、その場で単にお礼のスピーチをするのではなく、内容をしっかりプレゼンテーションする。土木分野・建築分野・IT分野とも刺激的で、たとえば計画手法・維持管理のための計測手法・データマネジメントの新たな知見に触れるのは刺激的なものであった。とくに、私は普段は土木の研究者との接点はほとんどないだけに、聴けば建築とクロスオーバーできるものがたくさんあることがわかった。
加えて、指導教官が受賞者の功績にコメントする機会があったのは面白かった。優秀な教え子には自分が手掛けたことのないテーマを与えるのだとか、味わいある話が次々登場した。理系研究の指導には、まずは枠をはめるところからスタートし、そこから自ら脱皮を促す流れがあると思うが、こうしたコメントのおかげでオリジナリティのある成果にたどり着くダイナミズムがよく見えた。
財団は多くの先進研究と国際会議への支援をしていて、この授賞式はこれから始まる取組みに対する助成の認定式を兼ねている。ちなみに、私が実行委員の一人であった「第16回DOCOMOMO国際会議2020+1東京」は、昨年度の財団助成対象となっていた。2021年はこの授賞式がなかったので、会議の本番が終わった後の今年に助成認定の紹介がなされたというわけである。オンライン開催だった我々の会議は、運営上の工夫によって多くの参加者を得て学術的な広がりを生んだのだが、こういうかたちだけでなく、いろいろ違ったアプローチからの知の拡張のスタイルがあることに気づかされた授賞式であった。