建築から学ぶこと

2024/12/25

No. 948

環境問題においても大きく踏み出す年へ

COP29(国際気候変動枠組条約第29回締約国会議)が11月にバクー(アゼルバイジャン)で開催された。途上国向けの気候行動に対する資金拠出拡大、パリ協定第6条(市場メカニズム)の完全運用化等が合意されている。建築と都市システムの改善による脱炭素化にかかわる議論も深まったようだ。実際、UIA(国際建築家連合)はCOPでの議論にかねてから参画しており、さまざまな国際機関や各政府との継続的対話を重ねている。
明年のCOP30はアマゾン川流域のベレン(ブラジル)で開催される。アゼルバイジャンが一次エネルギー産出国なら、ブラジルには森林破壊問題とその克服というテーマがある。UIAは次回に向けて、「公正な資金調達プロセスと持続可能な建設プロセスを提唱する」・「気候変動に立ち向かう、地域らしい建築を後押しする」・「気候行動の最前線として建築を位置付ける」・「文化の保全と、技術革新の間にある矛盾を調停する」の4方策を唱っている。当然ながら、建築は何のためにあるのか、それを創造するプロフェッショナルはどうあるべきかについても、踏み込んでゆくという(UIAウェブサイト掲載、12月18日)。
1995年のCOP開始、97年の京都議定書をふまえて2016年パリ協定発効へと地球環境対策は粘り強く議論を重ねてきた。しかし確かな効果を得た実感に欠けることから、包括的評価を定期的に実施すべきとの議論も始まった。現実には、不安定な国際政治や米国の次期トランプ政権の政策など、影響を及ぼしそうな動きがありながら、エネルギーの構造転換は前進している。これからも、UIAが述べるように、建築が描くビジョンと、具体的なイメージは議論の方向示すベンチマークになるべきだろう。そもそも建築設計とは状況に潜む矛盾を調停する行為である。建築のプロフェッショナルは社会の未来に向けて、領域を踏み出して行動することが重要なのではないか。

佐野吉彦

2025年が平和でありますように

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