建築から学ぶこと

2015/06/24

No. 479

地域を動かすメディア

ここ数年、新聞の購読者数は少しずつ減少してきている。特に40歳以下はネットを主たる情報ソースとして重視する傾向にあり、ネットの有用性はますます高まると思われる。いまはまだ新聞の定期購読者が活字媒体を信頼する割合は高く、しばらくメディアは適切な使い分けのもとにそれぞれの充実を模索してゆくことになるだろう。

そのなかにあって興味深いのが地方紙の存在で、たとえば徳島県の徳島新聞、福井県の福井新聞、鳥取県の日本海新聞などは、当地での新聞購読者のシェア占有率が70%を越えており、地域の情報基盤として盤石なものとなっている。沖縄県を見れば、沖縄タイムズと琉球新報の2紙が拮抗しながら、全国紙を寄せ付けないシェアを確保している。当然ながら地方紙は地域の情報を丹念に拾い上げる力があるだけでなく、地域が直面する課題についても深く掘り下げることができる。たとえば沖縄の2紙は、デリケートな問題を歴史に立脚しながら語ることにおいても、全国紙を凌ぐ。また、私は各地で書店を訪ねることを楽しみにしているが、地方新聞社が予想外に良質な建築ガイドを出版していることに気づくことがある。

これに加えて、狭いエリアで流通しているコミュニティペーパーにも充実したものがある。つまるところ、地方紙はじめ地域メディアの力量は現地に赴いてはじめて理解できるものだが、特に地域外への発信に手を掛けているとは言えない。一方でトリップアドバイザーのような口コミで内容を充実させる旅行サイトでは、ツーリストが感じる地域の魅力が拾い上げられてゆく。そのような外部の直観的な眼もうまく援用しながら、内部にある着実な歩み、文化の伝統をいかに育ててゆくか。経済が目指すのは外部からの流入促進と、それとリンクする地域活力の維持であるが、地方にあるメディアの役割はさらに重要になってくるであろう。

佐野吉彦

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